66歳の女性。左変形性股関節症。後方アプローチ…
56回の午前7です。(だったと思います…)頻出かと言われれば、うーん…何とも言い難いですが、授業や臨床的には抑えるべきなのでご紹介します。
後方アプローチにて人工関節全置換術(THA)を行なっています。禁忌肢位を取らないように生活するための動作指導として正しいものを選択する問題です。
○THAの後方アプローチでの禁忌肢位は
・過屈曲
・屈曲、内転、内旋の複合動作
です。
↓図1:股関節過屈曲の例
↓図2:股関節屈曲・内転・内旋の例
実際やってみると良いですが、国試勉強中は意外とそこまでの体力なかったりしますので頭の中で済ませますか。
・過屈曲→お腹と太ももが近づきすぎる
・屈曲内転内旋の複合動作→膝が内側に入る
このように変換してみると頭に入りやすいのではないでしょうか。臨床場面でも、患者さんに説明する際に理解して頂きやすいと思います。
それでは、選択肢を見ていきましょう。
1和式トイレ使用する
2足を組む
3椅子は低いものを選ぶ
4物を拾う時は非術側肢を前に出す
5端座位で靴に踵を入れるときは外側から手を伸ばす
股関節はどの様な肢位をとっているのでしょうか。
1 しゃがみ動作(股関節過屈曲)を要します。THAでは脱臼の危険があるため禁忌です。
2足組みは屈曲内転位をとります。THA術後では推奨されません。
3低い椅子に座ると体操座り(三角座り)に近い状態になるかと思います。股関節過屈曲となりますので、THA術後では脱臼の危険があるため禁忌です。
4 図をご参照ください。
↓図3 THA術後で床の物を拾う場合
5 座って靴を履くときに外側から手を伸ばして、足元へリーチすると、膝が内側に入り(股関節屈曲内転内旋位となり)、脱臼の危険があります。靴と靴下動作はこのような肢位を取りやすいので、術後に動作指導を行います。
国試的には、脱臼しやすい動作を頭に入れて、消去法で正解に辿り着くのが良いかと思います。
それでは4を選んで、3点頂きましょう。
76歳男性。誰もいないのに・・・
54回午前13問です。頻出問題ですね。
問題文から疾患を予想し、考えられる症状を選択するという構成になっています。
業者模試でも出題されますので、さらっと押さえていきましょう。
この問題文から読み取るべきポイントは、
・内容が明確な幻覚
・物忘れ
・認知機能の日内変動(日中ぼう然としている
こともある)
・転倒しやすい
です。この情報から、判断される疾患は、レビー小体型認知症ではないでしょうか。
レビー小体型認知症でおさえるべきポイント!
・幻覚→「」付きで明確な内容を症例が述べます
・パーキンソニズム→易転倒が取り扱われやすい
・認知機能・覚醒度の変動→日中にぼーっとしていることもあると一筆添えられます
・レム睡眠行動障害→共通問題の方で見かけます
・記憶障害→‘物忘れ‘という文言が添えられます
+高齢男性であること
です。女性でも発症しますが、性差(男性>女性)ありますので、男性で問題を作っているのでしょうか。
レビー小体型認知症は、その名の通り「レビー小体」が原因です。後頭葉の血流低下が認められます。視覚野がある後頭葉の血流が低下して機能障害を起こし、幻覚が生じていると考えれば頭に入れやすいでしょうか。
それでは、選択肢を確認しましょう。
1些細なことで泣き出す。
2他人のものを勝手に持っていこうとする。
3時間どうりに来室し同じ席に座る。
4わからない質問に対し言い繕って答える。
5日によって意識レベルの低下度合いが異なる。
1は感情失禁ですかね。→脳血管性
2社会行動障害→前頭側頭型
3常同性→前頭側頭型
4取り繕い→アルツハイマー
というわけで、選択肢が4つ消去できました。前述の内容が頭に入っていれば直接選択できますかね。本番はあえて回り道する必要はありませんが、今は他の選択肢も読み解いて、試験が問いたい内容を理解しておきましょう。損はありません。
5を選んで3点頂きましょう。
損傷部位と症状、の初めの一歩
試験では、左脳が優位半球、右脳が劣位半球として問題が出題されます。
今回ご紹介するのは、1点に絞りました。試験に出やすい(作成者が出しやすい)内容です。
○ゲルストマン症候群
・頭頂葉(下頭頂小葉)の角回の損傷によって生じる
・症状④:手指失認・左右失認・失算・失書
です。初めの第1歩かつ、比較的出題頻度の高い内容です。
脳の損傷部位についての問題は、難易度の幅の開きが大きいように感じます。「前頭葉損傷して注意障害が出ます」程度から、「相貌失認は側頭葉の紡錘状回の損傷によって起こります
」程度(これはびっくりしますよね)まで、バラエティ豊かです。
・・・56回を確認してみましたが、思ったより出題されていない印象です。どうなんでしょうか。調べてみます。
25歳男性。頸髄損傷。両手でボールペンを保持する操作。
過去にもありましたね。類似問題が。
午前3ですが、ザンコリーの問題ですね。最上位のレベルを選択せよとのことですので、ギリギリできるラインを選んでいきましょう。
下から見てみましょうか。
C8Bでの書字は?
手指屈曲可能、母指の屈曲も弱いが可能と言うことで、つまみの機能は完全ではありませんが、ADL上ではほとんど支障がないとされています。ボールペンは自助具なしで片手で把持できると考えられます。
C7Aでの書字は?
尺側指完全伸展可能とのことです。レベルが上がると、手指屈筋が効かなくなりますね。では、どうやって把持するかといいますと、手関節背屈が効いておりますので、テノデーシスを利用します。ボールペンは、自助具なしあるいは太柄にしたボールペンを使用し、テノデーシスを利用して片手で把持できると考えられます。
C6B3での書字は?
上記と同じく、長・短橈側手根伸筋が効いておりますので、ボールペンは、自助具なしあるいは太柄にしたボールペンを使用し、テノデーシスを利用して片手で把持できると考えられます。
C6Aでの書字は?
手関節背屈力が弱くなります。つまり、テノデーシスアクションは可能ですが、不十分です。片手で自助具なしにボールペンを把持することは困難と思われます。万能カフの適用があるのではないでしょうか。それか、反対の手部で支えるか、ですかね・・・。ひとまず保留にしましょう。
C5Aでの書字は?
手関節背屈は効きません。肘屈曲が作用します。テノデーシスアクションは不可能です。ボールペンは、装具を装着して使用することが適切と思われます。
国試で過去にも出ましたが、「手指屈曲拘縮以外の関節可動域制限はない」という文言がある場合、裏を返して、その他の関節は日常生活で使用している(機能している)と捉えてよいと思われます。つまり、この文章で何を読み取れば良いかというと、
手指屈曲拘縮以外の関節可動域制限はない
→手背屈や肘屈曲は機能している
→C6やC7機能残存周辺か?
と言う感じでしょうか。
モゴモゴとしてしまいましたが、最後に別紙
を見ていきましょう。母指と示指でボールペンを挟んで、それを対側の手で支えてるように見えますね。手関節背屈位になっているように見えます・・・。C7C8では、出来そうですね、あえて図のような把持をするかは別ですが。C6Aでも、背屈が弱いですが、図のように反対の手で支えればなんとか把持できると思われます。C5で出来るか?(持つだけなら出来そうな気がしないでもないですけどね・・・、)ということで、判断がつきかねますので、先程の「手指拘縮・・・以下略」を思い出してみましょう。この症例さんは、どうやら手関節の拘縮はない様です、と言うことで、背屈あるいは掌屈は機能していると捉え、C5は除外していただきまして。
C6Aを選んで3点いただきましょうか。
上肢装具、正中神経麻痺。
「手」はお好きですか。好み分かれますよね。
54回午前8をご参照ください。問題文は、ちょっとおもしろテイストですが、淡々と読み解いていきましょう。
長文ですが、解くための有益な情報はわずかです。もう選択肢の方から見ていきましょうか。
1、長対立装具
2、IP伸展補助装具
3、ナックルベンダー
4、Thomas型懸垂装具
5、コックアップスプリント
いかがでしょうか、これだけで何だか解けそうですね。
馴染みのある装具から見ていきましょう。
まずコックアップスプリントですが、適応は何神経麻痺でしょうか。(教科書によってはカックアップと表記されることもあります。Cockーupをどのようにカタカナにおこすかという話です。一緒のものを指します。)コックアップは橈骨神経麻痺に適応があります。
橈骨神経麻痺で選択すべき装具は?
・コックアップスプリント(掌側・背側)
・Thomas型懸垂装具
・オッペンハイマー型装具
です。国試レベルでは、この辺りを抑えていきましょう。業者模試だともう少し出てたかな、どうですかね。また調べてみます。橈骨神経麻痺では、下垂手あるいは下垂指が生じます。スプリントによって、手関節の掌屈・MP屈曲を防ぎます。
4と5は同じ神経麻痺に適応ということで、X2の問題であればこれが正解の可能性がありますが、今回は正解ではなさそうですね。
次に馴染みがあるのはナックルベンダーといったところでしょうか。ナックルベンダーは尺骨神経麻痺に適応があります。
尺骨神経麻痺で選択すべき装具は?
・ナックルベンダー
国試レベルでは、これが主だと思います。尺骨神経麻痺では、鷲手変形が生じます。スプリントによって、MP過伸展、IP屈曲位を防ぎます。こう考えますと、2のIP伸展補助装具も尺骨神経麻痺に適応があると言えそうですね。(PIP伸展位に矯正をかけると考えると、RAのスワンネック変形に適応があると考えられます。DIPを伸展させる装具は、槌指に適応があります。)
それでは最後に、長対立装具です。長対立装具は正中神経麻痺に適応があります。
正中神経麻痺で選択すべき装具は?
・短対立装具
・長対立装具
です。対立バーが付いており、第1中手骨を支え、母指対立位にすることができます。(余談ですが、対立装具は頸髄損傷の問題でも取り扱われることがあります。C5C6残存では長対立装具、C7残存では短対立装具が適応です。)
さて、ここまで選択肢を読み込んだ上で、問題文を見てみますと、正中神経麻痺で運動障害と感覚障害を認めているとのことです。というわけで、1、長対立装具を選んで3点頂きましょう。
上腕義手、適合判定。
上腕です、前腕ではありません。
適合判定に関しては、角度(数字)が出てきますので、出題者としては問題を作りやすいと考えられます。問題は、「義肢装具のチェックポイント」という教科書から出題されているようです。筆者が持っているのは、臙脂色のものです、110ページの図などがそのまま出題されていると思われます。
上腕能動義手のチェック項目におけるポイントは?
☆肘の能動屈曲可動域が、最大屈曲させて135°以上確保されている(肘屈曲ROM参考可動域は145°です)
☆肘90°屈曲位で、ケーブルの効率が50%以上の伝達効率
☆口元あるいはズボンのチャックの位置で、手先具を最大に開かせた時、手先具単体の最大開き幅の50%以上
☆引っ張り荷重下で、断端と義手のずれが、2・5㎝以内
ですね。上記で紹介した内容は、5の倍数で仕上がっています。この数字の他にも、何の評価をしている図か、ロックアンロック操作時は肩甲帯をどう動かすか、という点が過去に出題されています。教科書でチェックしてみてください。一度体験用義手を使うと頭に入りやすいですよ。
脳、動脈。
安静時、運動時と脳血流量はほとんど変化しないとされています。心臓や骨格筋は、運動時に血流量が増加するとされていますね。では、脳の血流分布については頭に入っていますでしょうか。
脳の血流分布についての問題でポイントは?
☆後大脳動脈領域にあるのは、視床。
ここをまず頭に入れていただいて。
授業では視床レベルのスライスの図にて、前大脳動脈領域、中大脳領域、後大脳動脈領域について習ったのでは無いかと思います。この中で、中大脳動脈領域がもっとも広く、起始部が詰まると大きな梗塞となります。発症頻度としても高いそうです。模擬症例で、右MCA領域の梗塞で〜といった書き出しを見たことがあるのでは無いでしょうか。
大脳基底核のほとんどが、中大脳動脈領域にあります。尾状核、被殻、前障、淡蒼球、内包です。これらを覚えるより、視床が仲間外れになっている点を覚えるのが早そうですね。いかがでしょうか。実際、学校の試験や模試においても、視床について問われると思います。(出題者が問いやすいのでしょうか?)
そしてもうひとつ、抑えておくべきは、脳の血管の名前と繋がりです。1年の時に苦労したであろう解剖学、その後半に登場した、「ウィリスの動脈輪」。模式図が頭に浮かぶでしょうか。
ウィリスの動脈輪の国試におけるポイントは?
☆中大脳動脈と繋がっているのは、内頸動脈、前大脳動脈、後交通動脈。
ということです。前交通動脈は含まれません。また、前交通動脈は左右の前大脳動脈を繋ぐ役割を担っており、1本しかありません。
過去に、動脈輪の模式図と血流分布を合わせた複合問題が出題されました。どちらも捨てる判断をするのは惜しいと思われます。